加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)の展示土器38点の個別観察をメモしています。この記事はNo.3土器です。
1 加曽利EⅠ式大把手小突起対向土器 No.3
加曽利EⅠ式大把手小突起対向土器 No.3
有吉北貝塚出土
加曽利EⅠ式大把手小突起対向土器 No.3
有吉北貝塚出土
2 発掘調査報告書における記述
No.3土器は縄文時代中期竪穴住居跡(SB090)から出土していて、「千葉東南部ニュータウン19 -千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)-第1分冊(本文)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)(以下発掘調査報告書等として適宜略称)ではつぎのように記述されています。
「5は交互刺突文と刻みのある口縁部に大きな把手と小さな突起を対向させた深鉢で、頸部に巡らした沈線から直・蛇行沈線が垂下する。」
出土土器挿図
発掘調査報告書から引用
出土土器写真
発掘調査報告書第3分冊から引用
なお発掘調査報告書ではNo.3土器出土竪穴住居跡の時期を7群(頸部無文帯成立以前の加曽利EⅠ式)土器群でとらえています。
3 観察と感想
3-1 器形と模様
3-1-1 大把手と小突起の対向
大把手は穴空間が3方に開く特異な立体形状を示しています。通常の加曽利E式土器のイメージでは異形です。
さらに強く興味を引く事柄として大把手に小突起が対向している様子です。
大突起に対向する小突起の様子
残存している小突起は欠けた突起(把手?)の一部です。
土器学習入門者だから許される妄想を述べれば、次のようなイノシシと蛇の対峙土器の系譜をひくものかもしれないと考え、否が応でも興味が深まります。
イノシシと蛇の対峙土器
埼玉県羽沢遺跡の深鉢形土器 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
ブログ芋づる式読書のメモ2018.02.28記事「猪と蛇の対峙」参照
3-1-2 交互刺突文
口縁部下端の「ギザギザ」を刺突文と呼び、それが交互になっているということだと思いますが、交互が理解できませんでした。一つ一つのギザギザが交互になっている様子がどうしても観察できません。あるまとまった単位ごとに交互なら写真が不足してわかりません。実物を見ればすぐわかることかもしれません。
口縁部の様子
3-2 内面の円周する凹み(沈線)と喫水線様黒模様
土器内面に円周する凹み(沈線)と喫水線様黒模様が観察できます。
(記事作成当初の観察が間違っていましたので観察結果を修正しました。2019.02.26)
土器内面の円周する凹み(沈線)は他の展示土器では観察できません。把手と小突起付口縁部を作る時の作業上の区分に関わるような造形か、あるいは何か機能を持っている造形か自分にはわかりません。
喫水線様黒模様は煮沸を多数回繰り返す中で形成された一種の「オコゲ」であると想定します。
土器底面に「べっとりついたオコゲ」「ザ・オコゲ」だけが煮沸を表現する指標ではなく、このような土器内面口縁部付近の喫水線様黒模様もまた煮沸によって付着した炭素であると考えます。
同じ現象は入口に展示されている巨大加曽利EⅡ式土器でも観察できます。
巨大加曽利EⅡ式土器内面の喫水線様黒模様
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企画展展示様子
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