2019年2月13日水曜日

加曽利EⅠ式口縁部矩形区画文土器

縄文土器学習 24 加曽利貝塚博物館企画展展示土器の観察 4

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)の展示土器38点の個別観察をメモしています。この記事はNo.4土器です。

1 加曽利EⅠ式口縁部矩形区画文土器 No.4

加曽利EⅠ式口縁部矩形区画文土器 No.4
有吉北貝塚出土

加曽利EⅠ式口縁部矩形区画文土器 No.4
有吉北貝塚出土

2 発掘調査報告書における記述
No.4土器は縄文時代中期土坑(SK222C)から出土していて、「千葉東南部ニュータウン19 -千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)-第1分冊(本文)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)(以下発掘調査報告書等として適宜略称)ではつぎのように記述されています。

隆帯による矩形区画文を口縁部に巡らし、胴部には2本一組の沈線を垂下した深鉢である。矩形区画文と垂下する沈線はいずれも7単位で、4単位については矩形区画の接する部分と垂下する沈線とが一致しているが、残る3単位は一致していない。

出土土器挿図
発掘調査報告書から引用

出土土器写真
発掘調査報告書から引用

なお、発掘調査報告書ではNo.4土器出土土坑の時期を8群(頸部無文帯成立以後の加曽利EⅠ式)土器群に比定しています。

3 観察と感想
3-1 器形と模様
3-1-1 加曽利EⅠ式土器の典型
No.4土器が企画展パンフレットでは加曽利EⅠ式土器の説明に使われています。

3-1-2 口縁部縄文と胴部縄文の向きの違い
口縁部区画文内縄文の向きと頸部・胴部縄文の向きが逆になっています。他の加曽利E式土器もほとんどが同じであり、口縁部と頸部・胴部の意匠上の違いが強く意識されています。

3-2 口唇部に貼り付く小突起 (発見)
口唇部に小突起が貼り付いています。口縁部の完成後、意図してこの小塊を口唇部に張り付けた様子がうかがえます。この小突起は発掘調査報告書には記述されていません。
No.3土器の小突起と類似しているように感得できるので、土器作成時に語られた物語と対応していると想像します。
この小突起に対向する部分は観察できないのですが、欠損しているようにも見えます。もし欠損しているならもかしたら把手が存在していたのかもしれないと夢想しました。

口唇部に貼り付く小突起

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企画展展示の様子

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追記 2019.02.16
口唇部に貼り付く小突起はイノシシをイメージしていると空想(作業仮説)しています。ただし、その小突起を貼り付けた縄文人の脳裏にイノシシのイメージが存在していたかどうか別問題であると考えます。

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