2019年2月4日月曜日

加曽利貝塚博物館企画展展示巨大土器について

縄文土器学習 16

加曽利貝塚博物館の企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)と縄文時代研究講座「千葉市内出土の加曽利E式土器」(2019.01.20開催)は自分にとってまたとない土器学習入門の場となりました。加曽利貝塚博物館の意欲的な取り組みに感謝申し上げます。

企画展にはガラス越しに加曽利E式土器が時系列的に多数展示されていますが1点だけガラス越しではなく観察できる土器があります。企画展入口付近に「巨大な加曽利E式土器」という説明文がある深鉢(加曽利EⅡ式、緑区有吉北貝塚)です。

巨大な加曽利E式土器

この土器の説明に違和感を持ちましたので、学習の対象としました。
説明文に「この土器に煤の付着はみられません。」「残念ながら「お鍋」説には無理がありそうです。」と書かれています。

「巨大な加曽利E式土器」説明文

しかし、自分の肉眼では煤が見えてしまいます。近隣遺跡出土特大土器は煮沸用がふつうで特段に特殊用途であるものは自分は知りません。

そこで思い切って博物館に質問してみました。
巨大土器の前でご担当の方から次のような説明がありました。
・この土器は何かに利用されたことはないようだ。作られてすぐに壊されたようだ。煮沸に使われたことはない。煤として見えるものは別の焚火などでついたもので煮沸とは無関係である。
・この土器の用途としては別の場所で巨大土器が棺として使われた例もあり参考になるかもしれない。

当方は全くの素人であり、素人ゆえに説明に納得することは出来ませんでした。
その場で次の2点の観察を述べましたが、煤・コゲに関する見解の相違は埋まりませんでした。

私の巨大土器観察結果
内側2条の喫水線様のコゲ、外面と内面のスス・コゲ分布域の略一致、ふきこぼれ様コゲなどはこの土器が煮沸に供されたことを示している。

自分のスス・コゲに関する知識は生活体験での知識であり、縄文土器専門知識ではありません。従って自分の観察が間違っていると確認できれば、大いに学習が進むことになります。自分の観察が間違っていても、間違っていなくても、学習を大いに促進できるポイントに到達できた感覚を持ちました。

なお、この土器の出土状況を「千葉東南部ニュータウン19 -千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)- 第1分冊(本文)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)で調べると、北斜面貝層基底部の一括投入土器の中から出土しています。

巨大土器(294)の出土状況
「千葉東南部ニュータウン19 -千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)- 第1分冊(本文)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)から引用・加色
出土土器にはこの土器と同等以上の大きさの土器も含まれています。また多数土器が一括投入された状況からこの巨大土器が特殊な扱いを受けていたとは考えにくいと直観できます。

展示巨大土器は使い込まれて外面内面が真っ黒になった状況ではないとは思いますが、ガリー基底部の地下水流動でススコゲの一部が洗われた可能性があります。新品で廃棄破壊されたとの見立てはやはり納得できません。
煮沸用ではない別の目的でつくられ、即破壊されたとの考えは、他の多数土器と一括投入されたような形跡から考えずらいです。棺などの可能性はないと考えます。

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