2019年2月15日金曜日

加曽利EⅡ式渦巻文区画文土器の3D観察

縄文土器学習 27 加曽利貝塚博物館企画展展示土器の観察 6

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)の展示土器38点の個別観察をメモしています。この記事はNo.6土器です。

1 加曽利EⅡ式渦巻文区画文土器 No.6

加曽利EⅡ式渦巻文区画文土器 No.6
有吉北貝塚出土

2 報告書による記述
有吉北貝塚発掘調査報告書にはNo.6土器は記述されていないようです。
当初次の土器がNo.6ではないだろうかと考えましたが微細な点が異なり、最後は3D画像が決め手となり下記挿図土器とNo.6は異なることが判りました。

No.6に類似する土器
「千葉東南部ニュータウン19 -千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)-第1分冊(本文)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)から引用

3 観察と感想
3-1 器形と模様
口縁部が横方向にシッカリと独立していて、渦巻きによって区画される横長部分の縄文模様方向が胴部縄文模様方向と90度異なります。
胴部には磨消懸垂帯が垂下して加曽利EⅡ式の特徴を表現しています。

3-2 渦巻文の特異な形状
No.6土器はその展示場所の関係から渦巻文を1つしか観察できませんでした。その渦巻文の形状が異なる角度の写真でみても判断できませんでした。全体に色が黒く同時に別の色が混じっていて納得感のある立体感を感得できません。
そこで思い切って4枚の異なる角度の写真から3Dデータを作成するときれいな3D画像を得ることが出来、渦巻文の立体形状とその特異さが判りました。

渦巻文の3Dデータによる画像 1

渦巻文の3Dデータによる画像 2

渦巻文の3Dデータによる画像 3
1は撮影写真と似ていますが、2はより立体性が浮かび上がります。3は立体性が完全露出します。
口縁部上端の左から来た隆部が右下に落ちてから上がり消える渦巻きになっています。

ところがこのような渦巻き模様は有吉北貝塚発掘調査報告書掲載土器に見つけることが出来ません。全ての土器が次の例のような渦巻きになっています。
この土器の渦巻文は特異例であると考え、その意義を土器専門家に質問したいと考えます。

渦巻文の通常形状
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

3-3 ガラス越し撮影土器の3Dデータ化について
ガラス越し撮影土器の3Dデータ化がいとも簡単に、ほとんど時間がかからず、かつ満足のいく仕上がり質感で出来たことに驚きを禁じえません。興奮がなかなか収まりません。
利用ソフトはフリーソフトで、結果の各種エクスポート・保存も可能です。日本語化もされ、チュートリアルもきわめて充実しています。ヨーロッパの方がパソコンソフト文化の程度が日本やアメリカよりも高いと感じます。(QGISもヨーロッパ原産のようです。)
2019.02.09記事「縄文土器3Dデータ作成のメドが立つ」参照

3DF Zephyr Freeの画面
3D化作業は別記事で詳しく書きます。

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企画展の土器展示


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