2019年2月17日日曜日

加曽利EⅡ式4小突起波状口縁土器の観察

縄文土器学習 30 加曽利貝塚博物館企画展展示土器の観察 9

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)の展示土器38点の個別観察をメモしています。この記事はNo.8土器です。

1 加曽利EⅡ式4小突起波状口縁土器 No.8

加曽利EⅡ式4小突起波状口縁土器 No.8
有吉北貝塚出土

2 発掘調査報告書における記述
No.8土器は縄文時代中期土坑(SK483)から出土していて、「千葉東南部ニュータウン19 -千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)-第1分冊(本文)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)(以下発掘調査報告書等として適宜略称)ではつぎのように記述されています。

3は土坑底面で、壁に倒れかかるように出土したもので、4単位の小突起を持っ波状口縁の深鉢である。突起下には、隆帯と沈線による渦巻文及び円形文の組み合わせたものを配
し、胴部には8単位の磨消懸垂帯を持つ。文様の割付けはほぼ均等に行われている。

出土土器挿図
発掘調査報告書から引用

出土土器写真
発掘調査報告書第3分冊から引用

なお、発掘調査報告書ではNo.8土器出土土坑の時期を10群(胴部磨消懸垂文成立以後の加曽利EⅡ式で、連弧文土器が盛行する段階)土器群に比定しています。

3 観察と感想
3-1 器形と模様
・器形は発掘調査報告書記述の通りで、優美な姿を伝えていると感じます。口縁部の縄文模様と胴部縄文模様の方向が同じであり、この時期では少数派になると思います。

3-2 3Dデータ作成実験
次の4枚のガラス越し写真で3Dデータを作成しました。

3Dデータ作成実験写真
4枚の写真のうち右端はソフトにより拒否され、実際は3枚の写真により次の3Dデータが出来ました。

完成した3Dデータ
たった3枚のガラス越し写真でもこれだけの3Dデータができるのですから、多数写真をとれば土器全体に及ぶ3Dデータ作成が見込めそうです。

次のような学習状況が存在する場合、3Dデータ作成は価値の大きな活動であると考えました。
1 色や材質感が不鮮明で詳細な造形や模様が判らない場合。
2 複雑な模様や造形であるため展示会場で精密な観察ができない場合。
3 特異な形状等であり写真では記録が不十分になる場合。

同時に、3Dデータを作成しなくても土器を多方面から写真を撮っておけば後で有用な情報源となることを知りました。土器撮影は1枚で終わりではなく、遠慮なく多数枚行うことが大切であることを知りました。

3Dデータ作成フリーソフトの操作メモ
ブログ花見川流域を歩く番外編2019.02.16記事「3DF Zephyr Freeの操作メモ」参照
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企画展 土器提示の状況

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