2019年2月5日火曜日

加曽利博展示巨大土器に火焔摩滅発見

縄文土器学習 17

2019.02.04記事「加曽利貝塚博物館企画展展示巨大土器について」の続きです。
現在加曽利貝塚博物館で開催されている企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで)に展示されている加曽利E2式土器(深鉢、有吉北貝塚)に火焔によると考えられる縄文摩滅を発見しましたのでメモします。

1 A面とB面
展示巨大土器の写真は次のようにA面とB面の2種類を撮影していたので、そのように区別します。結果としてA面とB面が被火焔という側面で全く異なる対照的な状況にあったことが判明しました。

A面とB面

2 比較箇所
土器口縁部(1)、頸部~胴部(2)、胴部下部(3)の3箇所をAとBで比較します。

比較箇所の設定
A1とB1、A2とB2、A3とB3を比較する

3 縄文模様摩滅状況の比較

A1とB1
口縁部縄文模様の凹凸を詳しく比較するとBで摩滅している部分があることを確認できます。

A2とB2
B2の縄文模様摩滅が顕著です。度重なる被火焔により縄文のミクロな突起が摩滅脱落した結果であると考えられます。
なおA2の左下付近も縄文のミクロな突起が摩滅していますが、これは破片がガリー谷底を流れる際、あるいはガリー谷底における地下水流動で摩滅したものであると推定します。しかし、A2のそのような状況よりB2の被火焔による摩滅の方がはるかに顕著です。

A3とB3
B2と同様にB3も被火焔による縄文ミクロ突起の摩滅脱落が顕著です。
A3の左上は破片がガリー谷底で受けた物理的摩滅であると推定します。

4 メモ
4-1 巨大土器は通常の煮沸用土器
企画展展示巨大土器が煮沸用土器として日常的に使われた形跡の存在が明白となりました。火焔により縄文ミクロ突起が摩滅脱落しているのですから、1回や2回の煮沸活動ではなく、多数回利用されたことは確実です。「この土器はたまたま何かの焚火の跡がついたもので、新品が使われることなく壊された」という説明は根拠薄弱であると考えます。

4-2 特定方向土器加熱は炉の形式を暗示する
同時に自分にとって貴重な情報は土器加熱が360度のまわりから行われたのではなく、特定方向から行われた可能性が濃厚であるということです。このような特大土器を360度の回りから加熱したら煮物をかき混ぜたり、水を加えたり、アクを取ったりすることが困難です。またそもそも土器を安定設置させることができません。
特定方向から火を燃やして土器加熱したという事実はこの土器を設置した炉の形式を暗示するものです。

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