2019年5月11日土曜日

浮島式土器出土遺跡の千葉県分布

縄文土器学習 116

2019.05.10記事「浮島式土器 神門遺跡ほか」で観察した浮島式土器が出土する遺跡を私家版千葉県遺跡データベースで検索し、その結果をQGISで分布図にして検討してみました。
なお、浮島式土器はⅠ、Ⅱ、Ⅲ等に細分されていますが、観覧した土器がそのように区分されていないので現状では一括して捉えることにします。細分学習は将来の課題とします。

1 浮島式出土遺跡の千葉県分布

浮島式土器出土遺跡
私家版千葉県遺跡データベースで浮島式を検索すると400レコード(遺跡)がヒットしました。

浮島式土器出土遺跡ヒートマップ
カーネル密度推定による作図であり、色が濃いところほど遺跡密度が高くなっています。
遺跡密度が高いところは大局的にみると次の3箇所になります。
・奥東京湾と古鬼怒湾が近接した付近 A
・都川・村田川河口付近 B
・大須賀川流域・栗山川源流付近 C

浮島式期の前の黒浜式期の分布はAがメインでしたが浮島式期になるとBとCで遺跡密度が高まったと言えます。
2019.05.08記事「黒浜式土器出土遺跡の分布」参照

2 貝塚との関係
浮島式期頃の貝塚分布図が「千葉県の歴史」に掲載されています。

浮島式期頃の貝塚分布図 
2017.02.12記事「千葉県の貝塚学習 縄文時代早期中葉」から引用(元資料は「千葉県の歴史 考古4 (遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行))

この貝塚分布図と浮島式土器出土遺跡ヒートマップを原始的操作でオーバーレイしてみました。

浮島式期頃の貝塚分布と遺跡ヒートマップオーバーレイ
A、Bは貝塚集中域と遺跡集中域が分布上明瞭に対応しているように観察できます。
一方、Cは貝塚の明瞭な集中はありません。また貝塚の分布が遺跡集中域の外縁部になっています。
A・BとCは何か違いがあるように感じます。

A・B地域は漁業を重要な生業とした社会をイメージできます。
一方C地域は生業についてあるいは漁業についてA・B地域とは異なる要素・条件があるのか、興味が湧きます。
C地域は貝殻文土器(浮島式土器)出土遺跡が密集します。その場所に貝塚がありません。
将来、発掘調査報告書レベルで詳しく情報を吟味することにします。

3 参考 観察土器の出土遺跡
3-1 千葉市神門遺跡

神門遺跡
海浜部にある貝塚でイルカ解体作業場などが出土しています。

神門遺跡出土浮島式土器
貝殻文が観察できます。

3-2 香取市毛内遺跡

毛内遺跡
周辺に貝塚がありません。(「千葉県の歴史」による。)

毛内遺跡出土浮島式土器
貝殻文が観察できます。

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