2019年5月17日金曜日

餅ヶ崎遺跡出土称名寺式土器の裏側盛り上がり 3Dモデル観察

縄文土器学習 126

1 称名寺式土器観察記事
2019.05.14記事「称名寺式土器 餅ヶ崎遺跡」で千葉市餅ヶ崎遺跡出土称名寺式土器を観察しました。その記事の中で「日本土器事典」における称名寺式土器記述を引用しました。その引用中には次の文章が含まれていました。
「沈線は何度もなぞられ、他の後期の土器に比べて幅が広く、かつ深いことが多い。そのため器壁の薄いものでは、沈線の裏の部分が盛り上がっていることがある。」
私の観察は沈線裏側についてはまったく無頓着であり、その実情は判っていませんでした。

2 Twitterでのご指摘ご教授
この記事アップ後、Twitterでpolieco archeさんからのご指摘ご教授があり、以前その土器を観察したことがあり、「突出ではない」という挿図とメモを残しているとして、それをアップしていいただきました。
同じ土器について過去に専門的観察がpolieco archeさんによって行われその結果を教えていただいたので、興味が強く湧きました。同時に自分としても同じ観察をするのが筋だと思い、早速その土器が展示されている加曽利貝塚博物館にでかけ、土器内面をガラス越しに観察してみました。

3 土器内面の3Dモデル観察
土器内面をガラス越しですが別角度から7枚の写真を撮り、3DF Zephyr Liteで3Dモデルを作成したところ、土器内面の凹凸が判るレベルでの3Dモデルを作成することができました。

餅ヶ崎遺跡出土称名寺式土器内面の3Dモデル

口縁部に幅広でとても深い沈線が2条刻まれていますが、その裏側付近に凹部2条とそれに挟まれた凸部1条が観察できます。その様子は次の‏matcap画像でも確認できます。(3Dモデル画面下のmodel inspector(i)でmatcapにすると写真が除去され立体物だけの表示になります。)

matcap画像
この情報から土器外面沈線と内面凹凸の関係を次のように分析することができました。

4 土器外面沈線と内面凹凸の関係分析

土器外面と内面の様子

土器外面沈線と内面凹凸の関係分析

ア 土器外面沈線に対応して内面に凹部があります。凹部には指で押した跡が多数見られます。
イ 土器外面の沈線に囲まれた部分(相対的に出っ張った部分)に対応して内面に凸部があります。この凸部には指で押した跡は見られません。

「器壁の薄いものでは、沈線の裏の部分が盛り上がっていることがある。」という「日本土器事典」の記述と較べると内面凸凹は真逆になります。
しかし、多数の指で押した跡の存在から次の推測が成り立ちます。
「この土器は最初沈線に対応して内面に凸部ができた。その凸部を解消するために指で押さえて凸部をへこませた。その時凸部は薄いので指で押さえた時元通りではなく、凹みすぎた。」
結論として、「この土器は沈線を描いた時、内面は盛り上がった。しかしそれを指で補正した。補正が過ぎてその部分が凹んだ。」と観察メモを残すことができると思います。

5 まとめ
polieco archeさんが残した観察メモ「突出ではない」はその通りです。同時に「日本土器事典」の「沈線は何度もなぞられ、他の後期の土器に比べて幅が広く、かつ深いことが多い。そのため器壁の薄いものでは、沈線の裏の部分が盛り上がっていることがある。」もある意味でその通りだったと言えると思います。

polieco archeさんご指摘ご教授に端を発した活動により、称名寺式土器の一つの特性を深く体験することができました。polieco archeさんに感謝します。

なお、ガラス越し撮影でも丁寧な撮影により有用な3Dモデル作成ができることを体験できました。自分にとっての学習ツールが増えたことになり、よかったと思います。

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