2019年5月10日金曜日

浮島式土器 神門遺跡ほか

縄文土器学習 115

縄文土器を形式別に観察しています。
この記事では千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている縄文前期浮島式土器4点を観察します。

1 浮島式土器展示の様子
展示室の早期前期土器展示コーナーには浮島式土器が4点展示されていますのでア~エの符号をつけて区別して観察します。

千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室における浮島式土器展示の様子

2 浮島式土器 ア の観察

浮島式土器 ア 千葉市神門遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示 

浮島式土器 ア 上半部拡大(写真色調整) 千葉市神門遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

櫛歯状具でつけたような平行沈線文蛇行曲線が描かれ、重ね書きも見られます。この沈線文が貝殻を利用したものであるかどうか、知識がないのでわかりません。しかし下部に波状貝殻文がありますから、貝殻片を合わせたつくった櫛歯状具かもしれません。 

浮島式土器 ア 下半部拡大(写真色調整) 千葉市神門遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

上下方向に波状貝殻文が2条見られます。

3 浮島式土器 イ の観察

浮島式土器 イ 佐原市毛内遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示 

胴部を回るように波状貝殻文が施文されています。

4 浮島式土器 ウ の観察

浮島式土器 ウ 佐原市毛内遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示 

胴部を回るように波状貝殻文が施文されています。

5 浮島式土器 エ の観察

浮島式土器 エ 佐原市綱原屋敷遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

縄文はありますが、貝殻文は観察できません。(写真が鮮明でないことが理由かもしれません。)

6 浮島式土器の印象
貝殻文が文様のメインになるということは、貝が生活の中で大きな比重を占めるようになったからであると考えました。
しかし、並行土器や後代土器では貝殻文がメインとしては消えますから、なぜ貝殻文になったのか興味が湧きます。

7 参考 「日本土器事典」の浮島式系土器群記述抜粋
「浮島式土器は、利根川下流域の茨城県、千葉県などを中心とする関東地方東部および東北地方南部にまで分布するもので、関東地方西部から中部地方にかけて見られる諸磯式土器に併行する土器型式である。
浮島式、興津式は、竹管と貝殻により施文された土器群であり、各種貝殻文の施文が諸磯式土器群との相異である。
これらの土器群は、文様などの分類については整理されている。地文に撚糸文か貝殻文が施され、半戴竹管による肋骨文の類、平行沈線が同部上半に施されている類、変形爪形文の類指あるいは棒状工具による圧痕文の類、三角文の類などである。しかし、それらの推移、組合わせについては整理する必要性、可能性を持っている。」
「日本土器事典」から引用

8 浮島式土器の較正年代

浮島式土器の較正年代
小澤政彦先生講演「東関東(千葉県域)の加曽利E式」資料(2019.02.24)では浮島式土器に並行する諸磯式土器の較正年代が6080~5530年前calBPとなっています。

次の記事で浮島式土器の千葉県域分布を検討します。
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