2019年7月17日水曜日

「千葉県縄文時代幕開けの地」と呼んだ成田空港付近の様子

縄文土器学習 195

2019.07.17記事「縄文草創期土器の分布」で草創期遺跡密集域が成田空港付近にあり、その場所を勝手に「千葉県縄文時代幕開けの地」と呼びました。この記事ではその幕開けの地の様子を観察してみました。

1 縄文草創期遺跡ヒートマップ

縄文草創期遺跡ヒートマップ
草創期遺跡密集域が成田空港に覆いかぶさるように分布しています。
縄文草創期遺跡ヒートマップ
遺跡密集域の地形をみると大須賀川源流域、根木名川の支流数本の源流域、栗山川の支流高谷川源流域にあたります。香取の海と九十九里に流れる河川分水界に位置する特殊な地勢の場所です。またすぐ近くは印旛沼水系高崎川源流域になります。
草創期縄文人は九十九里の海、香取の海、印旛沼(の海)にすぐ行けるという移動条件が最高の場所を選んで定住し、その付近が千葉県最初の縄文集落密集地になったと考えます。
これまでの学習で、縄文中期後期の発展期には遺跡密集場所が東京湾水系と印旛沼水系の分水界付近にたびたび現出する様子を観察してきました。その観察を踏まえると、九十九里の海、香取の海、印旛沼(の海)の分水界付近に遺跡密集地があらわれる原因は生業上の便利もあると思いますが、本質的には各地に散らばった仲間との連絡交流の便利が最大のものであったと想像します。谷津を下って水面を丸木舟で移動する。台地尾根筋を徒歩で移動する。その交通の便の良い場所で定住生活がたびたび営まれ、結果として遺跡密集域になったと思います。
次にこの場所が前代の旧石器時代はどうであったか、参考に観察してみます。

2 参考 旧石器時代遺跡ヒートマップ

旧石器時代遺跡ヒートマップ

旧石器時代遺跡ヒートマップ

縄文草創期遺跡と同じ方法で旧石器時代遺跡ヒートマップを描いてみました。成田空港付近は遺跡密集度が2番目の青であり、旧石器時代もこの場所が盛んに使われていたことが判ります。しかし旧石器時代の最高遺跡密集域は成田空港付近から少し離れた東内野付近になります。東内野付近も分水界に位置しますが大須賀川などからは離れて交通の便という意味では魅力が乏しくなる空間です。
旧石器時代は定住生活がないので、その場所から各地に移動することが便利だという条件は遺跡の存在とあまりかかわらないのだと思います。狩がしやすい場所が遺跡として残ったと考えます。
東内野は既往発掘調査でその場所に湖があり良好な狩場であったことが判っています。

参考 東内野遺跡説明資料
「印旛の原始・古代-旧石器時代編-」(財団法人印旛郡市文化財センター、平成16年)より引用

3 メモ
旧石器時代には成田空港付近も狩場として使われたけれども、すぐ近くの東内野湖付近ははるかに優良な狩場であったので、その場所が遺跡密集域として残ったと考えられます。
この旧石器時代情報と縄文草創期情報を一緒に考えると、縄文草創期の成田空港付近遺跡密集域の成立最大要件が定住条件の一つとしての移動便利性にあるように感じることができます。

0 件のコメント:

コメントを投稿