2019年7月11日木曜日

加曽利E式土器の分布

縄文土器学習 181

千葉県で出土する縄文土器の主要形式についてその出土遺跡分布図を作成して観察することにします。観察の順番は出土遺跡数の上位から下位に向かって行います。この記事では出土遺跡数1位の加曽利E式土器について観察します。
出土遺跡分布の観察方法は遺跡プロット図を作成し、それに基づいてヒートマップを作成します。ヒートマップから相対的な意味で遺跡が密集している場所がわかりますので、その遺跡密集地の確認を行うことにします。遺跡密集地はその時期の社会機能集中地域であった可能性が濃厚ですからとても重要な情報であると考えます。その当時の交通結節点であった蓋然性も高いです。なぜその空間が遺跡密集地となったのかという本質的な興味は後日の楽しみにとっておき、このシリーズでは割愛することにします。

1 加曽利E式土器出土遺跡分布図 千葉県

加曽利E式土器出土遺跡分布図 千葉県
背景に加曽利E式土器が出土しなかった遺跡分布を示しています。(灰色ドット)

2 加曽利E式土器出土遺跡分布ヒートマップ 千葉県

加曽利E式土器出土遺跡分布ヒートマップ 千葉県
どの土器形式でも同じ一定の基準でヒートマップを作成します。ヒートマップは遺跡密集→遺跡疎集を赤→黄色の色遷移で5段階で色分けし、密集2番目を青に色変更します。この色の内赤(最も遺跡が密集している空間)と青(2番目に遺跡が密集している空間)を対象に遺跡密集地の場所を確認することにします。
加曽利E式土器では次の3箇所の遺跡密集地が見つかります。
1 赤 千葉市若葉区・緑区付近
2 青 松戸市と市川市境界付近
3 青 成田市東端付近
この様子を詳しくみてみます。

3 加曽利E式土器出土遺跡密集地
3-1 千葉市若葉区・緑区付近

ヒートマップ 一般地図

ヒートマップ 水系図
赤い色(遺跡最高密集地)の部分が鹿島川と都川の分水界付近であることが大きな特徴です。つまり香取の海と東京湾の分水界ということです。
同時に興味深いことはこの付近の分水界が地形学的な意味での河川争奪の場所(都川河川争奪)であるということです。
2014.05.05記事「参考 都川河川争奪
2014.03.31記事「千葉市自然研究会編著「行こうさぐろう緑と水辺 千葉市自然ガイド」紹介
河川争奪という特殊地形を利用して香取の海と東京湾の交通結節点に加曽利E式期社会の遺跡密集地(機能集中地域)が形成されたということは特筆すべき観察事項であると考えます。
都川流域の西部(加曽利貝塚のある付近)は青色になっていて、赤色とは独立させて観察することも可能です。本拠点に張り付くサブ拠点のような関係だったのかもしれません。

3-2 松戸市と市川市境界付近

ヒートマップ 一般地図

ヒートマップ 水系図
この付近が中期から後期にずっと遺跡密集地であり続ける理由の一つが武蔵野台地(東京)と下総台地(千葉)の交通結節点(交流拠点、入植拠点、移出拠点)であったと想像しています。千葉県資料だけからでもその想像(仮説)を検証できる方法を見つけたいと思います。
2019.05.12記事「五領ヶ台式土器の3Dモデル、千葉県域分布等
2019.05.14記事「阿玉台式土器の千葉県域分布

3-3 成田市東端付近

ヒートマップ 一般図

ヒートマップ 水系図
加曽利E式土器分布密集が見事に大須賀川流域に対応しています。その見事さは加曽利E式土器が出土しない遺跡分布をくらべてみるとまさに一目瞭然です。
早期中葉の田戸下層式分布をはじめ大須賀川流域も縄文時代を通じて遺跡密集地であった空間です。
2019.05.08記事「黒浜式土器出土遺跡の分布」の参考など
大須賀川流域も茨城の台地(筑波稲敷台地、新治台地、行方台地、鹿島台地)と下総台地の交通結節点(交流拠点、入植拠点、移出拠点)であったと想像します。千葉県資料だけからでもその想像(仮説)を検証できる方法を見つけたいと思います。

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