2019年7月24日水曜日

黒浜式土器の分布と貝塚

縄文土器学習 210

縄文土器形式毎にその出土遺跡の千葉県分布図を作成しています。この記事では前期中葉の黒浜式土器の分布を観察します。

1 千葉県 黒浜式土器出土遺跡分布図

千葉県 黒浜式土器出土遺跡分布図
関山式土器出土遺跡135に対して黒浜式土器出土遺跡は415遺跡に急増します。3倍増です。関山式期が発展成長期なら、黒浜式期は加速成長期であり加速成長がピークに達した時期です。加速成長(人口急増)に応じて社会組織が変容している様子が下記2に引用したように「千葉県の歴史 資料編考古4(遺跡・遺構・遺物)」の貝塚の項に書かれています。


千葉県 黒浜式土器出土遺跡分布ヒートマップ
松戸から市川にかけて遺跡集中域が存在します。遺跡集中域の位置が関山式期と比べて松戸から市川に降りてきています。縄文海進ピークがこの時期には既に海退に転じ、利用できる好適海環境が南下している状況と対応している可能性があります。

2 参考 黒浜式期の貝塚分布とその記述 「千葉県の歴史 資料編考古4(遺跡・遺構・遺物)」引用
次の図は「千葉県の歴史 資料編考古4(遺跡・遺構・遺物)」掲載図から黒浜式期貝塚だけを抽出したものです

Ⅲc期(前期中葉 黒浜式期)貝塚分布図

●図書の記述
Ⅲc期(前期中葉 黒浜式期)には、古五田沼低地・座生沼低地(A)、矢切低地(B)、真間川低地(D)、手賀沼低地・柏-我孫子低地(C)の広域に、それぞれ貝塚の集中がみられる。
Ⅲc期(黒浜期)には、幸田貝塚のような大規模集落がなくなり、竪穴住居が数軒から数十軒という集落が数多く存在した。
野田市槙の内貝塚・流山市若葉台遺跡・我孫子市柴崎遺跡・同市西大作遺跡は広場集落である。
野田市飯塚貝塚・市川市庚塚貝塚・船橋市飯山満東遺跡などの規模の大きな集落は、Ⅲd期(諸磯期)に継続する例が多い。
全体として貝層からは骨の出土例が少ないが、庚塚貝塚や富津市大坪貝塚では魚骨や大型獣骨が比較的多かった。
2017.02.15記事「千葉県の貝塚学習 縄文時代前期初頭~中期前葉

3 メモ
・関山式期が成長期、黒浜式期がそれに輪をかけた加速成長期でそこがピークである様子を観察することができました。
・黒浜式期には関山式期とくらべると海進が海退に転じている様子が遺跡密集域の位置変化から推察できます。
・海進期に生まれる溺れ谷環境は縄文人にとってかけがえのない漁労の場創出のようです。海退により、あるいは上流からの土砂運搬による溺れ谷環境喪失は即漁労の場喪失を意味するようです。

4 参考 千葉県縄文土器形式別等出土遺跡数

千葉県縄文土器形式別等出土遺跡数

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