2023年12月17日日曜日

仏像墨画土器(市川市北下遺跡) 展示状況素3Dモデル

 Buddha statue ink painting earthenware (Ichikawa City,Kitashita Site) Exhibition status 3D model


I created a 3D model of the exhibition situation of the Buddha statue ink painting earthenware exhibited at the special exhibition "Praying for Happiness" at the Chiba City Folk Museum. Buddha statue ink painting earthenware is very rare.


千葉市立郷土博物館の特別展「幸福を祈る」で展示されている仏像墨画土器の展示状況素3Dモデルを作成しました。仏像墨画土器はとても珍しいものです。

1 仏像墨画土器(市川市北下遺跡) 展示状況素3Dモデル

仏像墨画土器(市川市北下遺跡) 展示状況素3Dモデル

撮影:千葉市立郷土博物館平成5年度特別展示「幸福を祈る -古代人の願いと造形-」

撮影月日:2023.12.13


展示の様子


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.507 processing 129 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 メモ

仏像墨画土器はとても珍しい事例です。人面墨書土器の一つの類型であると認識しています。仏像墨画土器の次の類例を墨書土器データベース(明治大学古代学研究所)の中で見つけたことがあります。


仏像墨画土器類例(佐倉市八木山ノ田遺跡)


2023年12月15日金曜日

施印土器「寺」(千葉市大椎第2遺跡)の展示状況素3Dモデル作成

 Creation of a 3D model of the exhibition situation of the engraved earthenware  "Temple" (Chiba City, Oshii No.2 Site)


I created a 3D model of the exhibition situation of the  "temple " earthenware pottery exhibited at the special exhibition  "Praying for Happiness " at the Chiba City Holk Museum. I believe that the character shape for "Temple" is the specific logo of 〇〇Temple.


千葉市立郷土博物館の特別展「幸福を祈る」で展示されている施印土器「寺」の展示状況素3Dモデルを作成しました。「寺」の字形は具体的な〇〇寺のロゴであると考えます。

1 施印土器「寺」(千葉市大椎第2遺跡) 展示状況素3Dモデル

施印土器「寺」(千葉市大椎第2遺跡) 展示状況素3Dモデル

撮影:千葉市立郷土博物館平成5年度特別展示「幸福を祈る -古代人の願いと造形-」

撮影月日:2023.12.13


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.507 processing 118 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 メモ

土器がまだ乾かない時に押型を押して施印したものです。同じ押型による他遺跡の施印土器例の写真が展示されていました。


展示説明写真

「寺」の字形は具体的な〇〇寺のロゴであると考えます。この土器の作製者も利用者も〇〇寺の福徳を信じていた門徒であったに違いありません。


香印盤形土器(市原市川焼第遺跡)の展示状況素3Dモデル作成

 Creation of a 3D model of the exhibition situation of incense seal board-shaped earthenware (Ichihara City,Kawayakidai Site)


I have created a 3D model of the display situation of the incense seal board-shaped earthenware exhibited at the special exhibition "Praying for Happiness" at the Chiba City Folk Museum. It is a Buddhist altar tool that burns incense in the shape of a single stroke, with the motif of a swastika (manji).

千葉市立郷土博物館の特別展「幸福を祈る」で展示されている香印盤形土器の展示状況素3Dモデルを作成しました。卍(まんじ)をモチーフにした、一筆書き状に香を焚く仏具です。

1 香印盤形土器(市原市川焼第遺跡) 展示状況素3Dモデル

香印盤形土器(市原市川焼第遺跡) 展示状況素3Dモデル

千葉県教育委員会所蔵

撮影:千葉市立郷土博物館平成5年度特別展示「幸福を祈る -古代人の願いと造形-」

撮影月日:2023.12.13


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.507 processing 126 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 展示説明

「香印盤は、灰の上に粉末状の香を一筆書き状に盛って焼香する香道具です。梵字などの複雑な文様を「香印」と呼び、香の燃える速度が一定なので時計(香時計)としても使われました。ルーツは不明ですが、中国の隋の時代には使われています。日本で古い事例は正倉院宝物の3点の資料です。史料の記載から当初は阿弥陀悔過で使われたことがわかっています。」

川焼台遺跡出土の香印盤は8世紀後半頃の住居床面から出土し、復元径26.0cm、重さ4.9kgほどです。上総国分寺か、国府の祭祀場である稲荷台遺跡でおこなわれた悔過法要で使用されたと考えられます。

3 展示状況素3Dモデルについて

展示現場で展示物を周回撮影して、その写真から作成した素3Dモデル(不都合を調整していない出来立ての3Dモデル)を展示状況素3Dモデルと呼ぶことにします。

今後は次の理由から展示状況素3Dモデルを多用することにします。

・展示状況素3Dモデル作成は短時間で作業が終わります。

・展示状況素3Dモデルは結像が不十分であったり、穴が開いていたりしていますから、完成度という点からみると低レベルです。しかし展示状況を立体的に伝える手段としては写真よりはるかに威力のある材料となります。3Dモデル作成が目的ではなく、3Dモデルを活用して考古遺物の理解を深めることが目的ですから、展示状況素3Dモデルを活用する意味は大きいと考えます。

・展示状況素3Dモデルから対象物を切り取って調整して作成する3Dモデル(観察記録3Dモデル)はその作成労力の割りには、得られる品質は満足できないものばかりです。


2023年12月14日木曜日

Photoshop2024の生成AI機能で遊ぶ

 Play with Photoshop 2024's generation AI function


I tried playing around with Photoshop 2024's generation AI function. I can draw a simulated pottery excavation situation or a simulated curator. However, this is a function that I don't use very often.


Photoshop2024の生成AI機能で遊んでみました。なんちゃって土器出土状況とか、なんちゃって学芸員を描くことができます。が、自分はあまり使わない機能です。

1 Photoshop2024


Photoshop2024のロゴ

生成AI機能では、画像の一部について範囲指定すると、その範囲に言葉で指定した画像が3案生成します。

2 なんちゃって土器出土状況


なんちゃって土器出土状況

土器展示写真の土器以外を範囲指定して「土、ローム」で画像を生成すると、なんちゃって土器出土状況画像ができました。

3 なんちゃって学芸員

博物館展示会場写真の一部を範囲指定して、「男、黒服、手に本を持つ」で画像を生成すると、なんちゃって学芸員画像ができました。


なんちゃって学芸員

4 なんちゃってトラクター

風景画像の一部を範囲指定して、「トラクター」で画像を生成すると、なんちゃってトラクター画像ができました。


なんちゃってトラクター

5 感想

一瞬の操作でそれらしき画像が生成するのですから便利です。しかし、自分の考古学習にはあまり出番がない機能ですから、少しもったいない新機能です。


特別展「幸福を祈る -古代人の願いと造形-」を観覧しました

 Viewed the special exhibition "Praying for Happiness - The Wishes and Creations of the Ancients"


I viewed the 2023 special exhibition "Praying for Happiness - The Wishes and Creations of the Ancients" at the Chiba City Folk Museum. The main sculptures related to the wishes, prayers, and beliefs of the ancient Boso people were on display, and it was very interesting to see.


令和5年度特別展「幸福を祈る -古代人の願いと造形-」を千葉市立郷土博物館で観覧しました。房総古代人の願い、祈り、信仰に係る主要造形物が展示されていて、とても見ごたえがありました。

1 特別展「幸福を祈る -古代人の願いと造形-」

この特別展は、2023.11.23~2024.01.28まで千葉市立郷土博物館で、2024.02.13~2024.03.03まで千葉市埋蔵文化財調査センターで開催されています。


特別展

展示はすべて撮影OKです。


展示の様子


展示の様子

展示は次の4章から構成されています。

第1章 聖武天皇の願い -国分寺と民衆仏教の開花-

第2章 神仏に祈りを -悔過と祓い-

第3章 星に願いを -古代房総の星信仰-

第4章 幸福の印 -「福」施印土器と宝印-

2 見ごたえのある展示

どの展示物もとても見ごたえがあり、短時間の観覧では全部咀嚼できません。今後千葉市埋蔵文化財調査センター展示も含めて何回か観覧して理解を深めたいと思います。(千葉市埋蔵文化財調査センター展示では千葉市立郷土博物館展示よりも展示物が増えるらしいです。)

今回の観覧では手はじめということで、最初に興味を覚えた次の3点の展示物について、3Dモデル作成用の周回撮影をしました。


香印盤形土器(市原市、川焼台遺跡)


施印土器「寺」(千葉市、大椎第2遺跡)


仏像墨画土器(市川市、北下遺跡)

3 墨書土器分布図

展示ケースの中に墨書土器分布図がありました。


墨書土器分布図

この分布図は数年前に作成協力したものです。2016年頃は墨書土器学習に熱中していました。その頃、明治大学古代学研究所墨書土器データベースを毎日分析して楽しんでいました。墨書土器データベースを分析するためにわざわざデータベースソフトFileMakerを購入したほどです。この分布図を見て、その当時の学習を懐かしく思い出しました。



2023年12月13日水曜日

5年前よりQGIS作業が快適にできました

 QGIS work has become more comfortable than 5 years ago.


This year's QGIS work was more efficient and comfortable than the QGIS work I did five years ago. I'll make a note of that situation. For me, even if it's obvious now, I'm sure I'll have forgotten it when I go back to work a few years later.


5年前のQGIS作業より今年のQGIS作業の方がより効率的で快適にできました。その様子をメモしておきます。今は当たり前でも何年か経って再び作業する時には忘れていること必定だからです。

以下、竪穴住居の特性分析の例です。

1 竪穴住居の描画

竪穴住居の界線描画は最初に必要です。界線を閉じる毎に、つまり竪穴住居毎にID(通し番号にしました)と名称(発掘調査報告書の名称、J56など)を入力しました。竪穴住居は全部で93ありますから、それを全部なぞって入力し、シェイプファイル出力しました。


竪穴住居描画の様子

2 竪穴住居一覧表のExcel書き出し

QGISで「属性テーブルを開く」で一覧表を表示します。


属性テーブル

この一覧表を全指定して、クリップボードにコピーします(Ctrl+C)。パソコンにExcelの新規画面を開き、その画面にクリップボードの内容を貼り付けます(Ctrl+V)。


QGIS属性テーブルの内容をExcelにコピーした画面

QGIS属性テーブルでは可視化されていなかった竪穴住居毎の位置情報(WKT Well-known text)も記述されています。


WKTの様子

3 Excelに諸情報を書き込む

Excelの一覧表に竪穴住居の情報・数値・分級などの特性を書き込み、このExcelファイルをCSV出力して、それをQGISで、レイヤ→レイヤを追加→CSVテキストレイヤを追加すると竪穴住居分布図がQGISに貼り付き、情報別、数値別、分級別に色分け表示ができるようになります。


Excelに諸情報を書き込んだ様子


Excelに諸情報を書き込んだExcelファイルをCSV出力してQGISに読み込み、分級(カテゴリ値による定義)により色分けした様子

4 以上のサイクルの繰り返し

つまり、一度竪穴住居の分布図を作画すると、竪穴住居単位の情報はExcelで追加してそれをQGISに描画表現できるようになります。QGISとExcelのサイクルが成立します。竪穴住居分布に関する考古的検討にはとても便利です。


QGISとExcelの作業サイクル

5 Excelファイル(CSVファイル)における分級表現について

Excelファイル(それを出力したCSVファイル)では、5年前にはある項目について、次のような分級表現をしていました。

1

2

3

凡例つまり、

1は加曽利EⅣ式

2は加曽利EⅣ式~称名寺式

3は称名寺式

4は…

という対応は別のメモで作成していました。

これではQGISでカテゴリー別に色分けする時にいちいち凡例を入力する必要があります。凡例の保存はできないようですから、カテゴリーを操作するといつも一から入力することになります。

しかし、今回はExcelファイル(それを出力したCSVファイル)で、次のような分級表現をしました。

1 加曽利EⅣ式

2 加曽利EⅣ式~称名寺式

3 称名寺式

4 …

このように入力すると、QGISでカテゴリー別に色分けする時に凡例をいちいち入力する必要がありません。取り扱う項目が増え、また項目の分級数が増えると、分級表現方法の工夫が作業効率化に影響を及ぼします。


QGISで一気に凡例がつくられる様子

なお、色は無作為で塗られるので、自分で調整する必要があります。

6 注意点

CSVテキストレイヤをQGISに追加した場合、情報の変更はできません(編集ができません)。そのレイヤをシェイプファイルに変換すると情報の変更(編集)ができるようになります。

7 メモ

5年前のデリミティッドテキストレイヤという言葉がCSVテキストレイヤという言葉に変更されていて、QGISが判りやすくなりました。


2023年12月12日火曜日

illustrator2024のテキストからベクター生成機能

 Vector generation function from text in Illustrator 2024


I tried the vector generation function from text in Illustrator 2024. I sometimes want to create vector images during my archeology studies, and I think this will be useful.


illustrator2024のテキストからベクター生成機能を試してみました。考古学習の中でもベクターのイメージ画を作りたいことが時々あり、役立ちそうです。

1 illustrator2024のテキストからベクター生成機能


illustrator2024のロゴ

ベクター生成機能はBetaで提供されています。

ベクター生成は次の種類でつくることができます。

・被写体

・シーン

・アイコン

・パターン

テキスト「富士山、夕焼け、水彩画」でそれぞれ試してみました。


被写体


シーン


アイコン


パターン

パターンはスウォッチに自動登録されます。

被写体のベクター画像のレイヤを覗くと多数のレイヤが確認できます。


ベクター画像とそのレイヤ

ベクター画像はその場で色味の変更が自由にできます。


ベクター画像の色味変更

2 感想

・考古学習で炎のベクター画像をillustrator2024で作成して実用的に利用しました。以前なら、webでそれっぽい画像を探して、それをトレースして作成していたのでが、今回は一瞬のうちに作業が終了しました。さすがillustratorです。

・テキストの言葉選びが大切であるようです。少なくても3~5語くらいで指示するのがよいようです。

・ChatGPTや類似AIでも感じますが、このillustrator2024の生成AIも大元の情報源が英語圏のものですから、日本人好み、あるいは東アジア人好みの絵はあまり期待できないようです。「縄文土器」を入力すると古代ギリシャ風の壺の絵が出てきたりします。



2023年12月4日月曜日

2023年11月ブログ活動のふりかえり

 November 2023 blog activity review


I looked back on the November 2023 activities of my blog 'Walking along the Hanami River Basin'.

I went on my first overseas trip after the coronavirus, and spent the first half of the month writing related articles. In the second half of the month, I enjoyed the full-fledged resumption of my studies at Daizenno Minami Shell Mound.


ブログ「花見川流域を歩く」の2023年11月活動をふりかえりました。

コロナ明けはじめての海外旅行にでかけ、月前半は関連記事を書きました。月後半は大膳野南貝塚学習の本格再開を楽しみました。

1 ブログ「花見川流域を歩く」

・2023年11月の記事数は14です。

・イタリア旅行の準備と旅行感想記事を8編書きました。

・QGISをツールとして楽しむ大膳野南貝塚学習に関連する記事を4編書きました。

2 ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」

・早朝散歩記事を4編書きました。

3 2023年11月活動の特徴

・コロナ明けはじめて、4年ぶりの海外旅行を老夫婦で実行し、心配した病気や事故も無く、なんとか無事帰国できたことはそれだけで楽しいことでした。

・ポンペイ遺跡見学など百聞は一見に如かずの例え通りの経験ができました。また海外で趣味の切手店をみつけ、趣味の切手を購入するというささやかな夢を実現できました。

・海外旅行ではバス、ホテル、空港などほぼ一日中無料Wi-Fiが繋がり、ツアー参加者のほぼ全員が常時スマホでwebに繋がっていて、時代変化を実感しました。

・5年前にまとめた大膳野南貝塚学習を再開して、熱中しだしました。QGISをツールに進める学習で、QGIS操作の楽しさを満喫する日々を送っています。

4 2023年12月活動の展望

・12月におゆみ野歴史愛好会の皆様と大膳野南貝塚をテーマ学習交流する予定です。学習交流を充実させるために、短い期間ですが大膳野南貝塚学習活動を局限まで楽しみ、その体験を話したいと思います。

・学習交流後には再び有吉北貝塚学習に復帰することにします。

・長い間中断している近隣博物館の観覧活動、展示物3Dモデル作成も始めたいと思います。

参考

ブログ「花見川流域を歩く」2023年11月記事 〇は閲覧の多いもの

ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」2023年11月記事


2023年11月にSketchfabに投稿した3Dモデル


2023年11月にYouTubeに投稿した動画


2023年11月にブログ「花見川流域を歩く」投稿記事に掲載した画像


2023年12月3日日曜日

大膳野南貝塚 集落消長と貝層形成

 Daizenno Minami Shell Mound: Settlement change and shell formation


I have found that the relationship between the evolution and development of the late  Daizenno Minami Shell Mound settlement and the formation of shell layers is almost the same. During the study, it became clear that many of the shellfish produced during the Horinouchi 1st period, when the village was at its peak, may have been taken out of the village, along with their shells.

大膳野南貝塚後期集落の消長と貝層形成の関係が略一致していることを把握しました。検討の中で、集落盛期の堀之内1式期には生産した貝の多くが貝殻ごと集落の外に持ち出された可能性も浮かび上がりました。

1 貝層から出土した土器の時期別点数

北貝層と南貝層について、出土した土器の時期別点数がまとめられています。


貝層から出土した土器の時期別点数

大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

貝層は称名寺式期から始まり、堀之内2式期までつづいたことが出土土器点数からわかります。加曽利EⅣ式土器の出土はないので、加曽利EⅣ式期には貝層は形成されていません。加曽利B式土器出土はわずかですから、加曽利B式期も貝層形成はほとんど無かったと考ええることができます。

北貝層と南貝層の出土土器時期別割合を整理すると次のようになります。


貝層出土土器の時期別割合

出土土器点数の多寡と投棄貝層量は略比例すると想定するならば、このグラフは貝層量の時期別割合を示す大勢情報として見ることができます。そのように考えると、大勢相場観として称名寺と堀之内1古段階合わせてほぼ半分弱の貝層が形成され、堀之内1中~新段階でも同じくほぼ半分弱の貝層が形成され、堀之内2では残りの少しだけ貝層が形成されたと捉えることができます。


北貝層と南貝層の様子

大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用


北貝層と南貝層の様子

大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

2 時期別に見た集落消長と貝層形成

2-1 加曽利EⅣ式、加曽利EⅣ式~称名寺式 竪穴住居と貝層の関係


加曽利EⅣ式、加曽利EⅣ式~称名寺式 竪穴住居と貝層の関係

・加曽利EⅣ式期に竪穴住居漆喰【有】は存在しません。

・貝層から加曽利EⅣ式土器は出土していません。

・加曽利EⅣ式期に貝層は存在していなかったと想定できます。

2-2 称名寺式、称名寺式~堀之内1式古 竪穴住居と貝層の関係


称名寺式、称名寺式~堀之内1式古 竪穴住居と貝層の関係

・称名寺式期から貝層形成が始まります。

・竪穴住居漆喰【有】住民が住居付近に貝投棄したのが貝層形成の始まりと想定できます。

・称名寺~堀之内1古段階の期間に貝層の半分近くが形成されたと推定できます。

・住居軒数の割りに貝層形成のボリュームが大きく、漁労効率がきわめて良かったと推定

します。

2-3 堀之内1式 竪穴住居と貝層の関係


堀之内1式 竪穴住居と貝層の関係

・堀之内1(中~新)に竪穴住居漆喰【有】が急増し、その住民による貝層形成が盛んで

あったと想定できます。

・堀之内1(中~新)に貝層のおよそ半分が形成されました。

・貝層は古い住居を覆って形成されたと想定できます。


参考 堀之内1式+後期 竪穴住居と貝層の関係

2-4 堀之内2式、堀之内2式~加曽利B1式 竪穴住居と貝層の関係


堀之内2式、堀之内2式~加曽利B1式 竪穴住居と貝層の関係

・堀之内2式期の始めにはすでに貝層がほとんど形成されていたと想定できます。

・竪穴住居漆喰【有】も少なく、新たな貝層形成はわずかであったと想定できます。

・この時期には堀之内1までの住居の大半は貝層に覆われていたと想定できます。

・堀之内2式期が貝層形成最終期になります。

2-5 加曽利B1式、加曽利B1式~B2式 竪穴住居と貝層の関係


加曽利B1式、加曽利B1式~B2式 竪穴住居と貝層の関係

・加曽利B1式、B2式期に貝層形成はほとんど無かったと想定できます。

・竪穴住居漆喰【有】も存在していません。

3 メモ

・竪穴住居漆喰【有】の消長と貝層形成プロセスが大勢として略一致していることを把握しました。

・貝層出土土器数から、大勢観として称名寺~堀之内1古段階合わせてほぼ半分弱の貝層が形成され、堀之内1中~新段階でも同じくほぼ半分弱の貝層が形成されたと捉えることができます。

・称名寺~堀之内1古段階の竪穴住居漆喰【有】は5軒、堀之内1中~新段階の竪穴住居漆喰【有】は25軒(「後期」を含めると29軒)であり、竪穴住居漆喰【有】の軒数が大きく異なります。竪穴住居漆喰【有】1軒当りが海から採取した貝量がどこ時期でもほぼ同じであったと仮定すると、堀之内1中~新段階では貝層に投棄した量が極端に少なくなり、その理由を考える必要が生まれます。(この思考では称名寺~堀之内1古段階と堀之内1中~新段階の年数の違いは考慮していません。)

・堀之内1中~新段階では採取された貝の多くが貝層形成に回らなかった可能性が浮かび上がります。貝殻ごと集落の外に持ち出されたのかもしれません。


2023年12月2日土曜日

大膳野南貝塚後期集落の盛衰と漆喰

 The rise and fall of the late Daizenno Minami Shell Mound settlement and its stuccorwork


The rise and fall of the late Daizenno Minami Shell Mound settlement and its relationship with stucco.

I organized QGIS into tools by time period. It started out as a non-fishing village in the Kasori E IV period, developed greatly as a fishing village in the Horinouchi I period, and ended as a non-fishing village in the Kasori B2 period.


大膳野南貝塚後期集落の盛衰と漆喰との関係をQGISをツールに時期別に整理しました。加曽利EⅣ式期に非漁労集落として出発して、堀之内1式期に漁労集落として大発展し、加曽利B2式期には非漁労集落として終焉します。

1 時期別竪穴住居・土坑からみた大膳野南貝塚中期末~後期集落の盛衰

1-1 加曽利EⅣ式、加曽利E式Ⅳ式~称名寺式


加曽利EⅣ式、加曽利E式Ⅳ式~称名寺式

加曽利EⅣ式期、加曽利E式Ⅳ式~称名寺式期の竪穴住居から漆喰炉や漆喰貼床は検出されていません。貝層が検出される土坑があるので、漁労が全く行われていなかったとは言えませんが、漁労が生業の中でメインでなかったと言えます。

竪穴住居分布が散漫であり、その様子は中期大規模貝塚崩壊後の小集落分散居住の様子と整合します。

1-2 称名寺式、称名寺式~堀之内1式古


称名寺式、称名寺式~堀之内1式古

竪穴住居は全て漆喰が検出されます。竪穴住居の位置は北斜面貝層と南斜面貝層に存在していて、これらの竪穴住居は大膳野南貝塚後期漁労集落の始祖といえる家族が居住したものであると想定できます。

称名寺式期に大膳野南貝塚集落の漁労活動が軌道に乗り、豊かな海産物を入手加工する条件や技術が確立し、漆喰文化がスタートしました。

1-3 堀之内1式


堀之内1式

竪穴住居は急増します。集落は堀之内1式期がピークとなります。竪穴住居漆喰【有】と匹敵する数の竪穴住居漆喰【無】が伴います。

海産物入手加工により大膳野南貝塚集落が地域の生産拠点となり、人口急増現象が生じたと理解します。漆喰文化が花開きました。

竪穴住居漆喰【有】は集落定住民の住居であると考えます。竪穴住居漆喰【無】は集落定住民と交易したり、各種サービスを提供する周辺地域住民の一時逗留施設などであったと想定します。

竪穴住居漆喰【無】の意義について、さらに検討を深めることにします。

竪穴住居漆喰【有】と土坑貝層【有】の分布は略環形となり、環形ゾーンを構成します。竪穴住居漆喰【無】と土坑貝層【無】の分布はこの漆喰・貝層環形ゾーンの内側と外側に分かれて分布するように大勢観察できます。


(参考)堀之内1式+後期

発掘調査報告書では縄文後期竪穴住居とされたもののほとんどは堀之内1式のものであると想定されるとしています。そこで、堀之内1式+後期の集落分布図を作成しました。この分布図が集落ピークの堀之内1式期集落のイメージにより近いものと考えます。

1-4 堀之内2式、堀之内2式~加曽利B1式


堀之内2式、堀之内2式~加曽利B1式

竪穴住居漆喰【有】と竪穴住居漆喰【無】が並立します。竪穴住居漆喰【無】には規模の大きなものが見られます。前の時期とくらべて漁労が衰退し、一方漁労ではない生業で生活する家族が生活していたことを想像できます。

1-5 加曽利B1式、加曽利B1式~B2式


加曽利B1式、加曽利B1式~B2式

竪穴住居は竪穴住居漆喰【無】だけです。土坑に貝層検出するものがありますから、漁労がゼロであったことはないと思いますが、集落家族は漁労以外の生業で暮らしていたと想定します。加曽利B2式期に集落は終焉した考えます。

2 メモ

集落が漁労をメインに大発展した堀之内1式期の竪穴住居漆喰【無】の意義について検討を深めることにします。竪穴住居漆喰【有】が存在する漆喰・貝層ゾーンと竪穴住居漆喰【無】が空間的に弁別されることは明白ですから、当時の縄文人も竪穴住居漆喰【有】と竪穴住居漆喰【無】の意味差異については強い弁別意識を持っていたに違いありません。